新製品

新しい表現としてポジション確保できるか?
ライトロのワークショップより


昨年末、日本上陸したライトロのライトフィールドカメラ。
その空間を立体データーとして記録することが出来るカメラですので、いろいろな使い方があります。
有名なのは「後でピントを合わせる」ことですが、私は別の所に注目しました。
今回参加したのは、Beauty & Fashionワークショップです。
しかし面白かったのは、ライトロの技術より彼らの見方でした。

 
■ライトフィールドカメラとは
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ライトロ社のライトフィールドカメラ、イルム

ステレオカメラはご存じだと思います。
立体に撮影するために、カメラ左右に同一レンズを配置したカメラですね。
見る時は、写真の上にレンチキュラーレンズ処理をするか、レンチキュラーレンズ処理されたビュワーを使います。

レンチキュラーレンズは、微細な細長いカマボコ状の凸レンズが無数に並んだシートレンズのことで、厚めの3Dカードなどの表面に付いているのを触った人も多いと思います。

ライトフィールドカメラは、これを複数レンズで行い、より精密な3次元空間情報を持つデータを取得するわけです。具体的には、主レンズとセンサの間に複眼状のミニレンズ・アレイを配置することで同様の効果を得ています。

データーはライトフィールド理論による演算処理を行うことで、任意の位置にピントや視点を変えられる画像が再生されるわけです。

 
■ライトフィールドは革命の1つ
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「Living Picture」は、ライトフィールドカメラで撮った写真の呼称。上段中央は「南北戦争」の写真。
乾板がなかった時代で撮影は大変だったとのこと。

カメラというか、写真という発明は、本当に進化してきました。
始まりは、窓のない暗黒の部屋の壁面に小さな穴を空けると、反対側の壁面に外の景色が映し出されるカメラ・オブスキュラ。

小穴の代わりにレンズを採用し、画をシャープに写せる様にします。

そしてそれを定着させるための技法が発明されます。
「ダゲレオタイプ」などがそれです。
そして写真湿板と続きます。

ダゲレオタイプは、露光時間が20分位、写真湿板は露光時は濡れていてそれが乾くまでに現像する必要があったため、外へ持ち出すこともできません。

次の時代、乾板ができてから、扱いがグンと楽になります。
ここからは知っている人もいられると思います。

 
一般的な普及は、コダックによります。
コダックは「あなたはボタンを押すだけ、後はコダックが全部やります」とし、それまでカメラマンが行っていた面倒な現像という行為を、ユーザーから引き受けます。
これで、一般ユーザーはカメラさえ扱えれば、自分の好きな写真を撮ることができるようになります。
「誰でも」の時代到来と言うわけです。

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黒シャツの男性が、David Sparer氏

ワークショップの主催者、David Sparer氏は、これを第一の革命と呼んでいます。
 
では、第二の革命は何でしょうか?
オートフォーカス?
デジカメ?

Sparer氏は違うと言いますね。
カメラは、3次元を2次元に落とし込み記録する道具です。
それが変わっていないということです。

つまり、氏によると、「3次元を3次元として記録するライトフィールド」こそ、第二の革命というわけです。

 
■新しいことは、否定されやすい
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カメラマンの Stephen Eastwood氏
ライトフィールドカメラを自在に操る

氏の話の中で面白い一節がありました。
「カラー写真が出てきた時、それを否定したのはプロの、名のあるカメラマンでした。」

画家も、写真家も、新しい表現を確立した人だけが歴史に名を残します。
しかし、それには時間が掛かります。
特に画家は顕著ですね。
死後に、名声を博した有名画家は、ゴッホを始め、いっぱいいます。

ゴッホなどは、その技法に名前を残している程ですが・・・。

 
それ位、新しいことは理解してもらえません。
当然やり始めは、稚拙だったこともあると思いますが・・・。

 
■3D表現の難しさ
今、プロ用としてライトロが使われ始めているのは、結婚式場だそうです。
プリントアウトではなく、データー渡しなのですが、スマホで再現します。
ピントを前から後ろにゆっくりずらすことにより、その空間を再現するのです。

 
2Dから3D化するには、奥行きが必要なのですが、それを表現するのに4Dの要素と言われる時間の手を少しもらうわけです。

これは2Dが連続して連なる動画ではありません。
「時は止まっている」のです。
その瞬間の空間を、数秒間堪能するわけです。

結婚式の主役は2人ですが、その空間にはお客がたくさんいます。
その1人、1人に、ピンが当たり、空間に蘇るのです。
これは中々の経験です

一見、動画の様にも見えますが、静止画の新しい表現です。
ただし「観る」のには、慣れが必要です。

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左)手前の「手」にピント、右)「顔」にピント
雰囲気は全く異なる。


 
■撮るのは簡単
DSCF3162今回、Beauty & Fashionワークショップを見せてもらって分かったのは、気を付けるところはピントですね。
ピント自体は、カメラが上手く合わせるのですが、どこに合わせるのかを指定する必要があります。
面白いのは、被写体深度で、それなりに写る距離なら、前後2つ設定できることです。
ピントが移動する時に、物語を作ることができます。

それ以外は、普通のカメラと扱いが違わないです。

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左)モデルのYURIさん、右)前ピンは水晶玉、後ピンはYUKIさん


■ライトフィールドは流行るのか?
今の時点では、分かりませんが、その素地はあります。

理由は、サイネージです。
今、日本のテレビメーカーは、デジタルサイネージに参加を表明しています。
解像度は4K。

デジタルサイネージに使われるパネルは大きいですからね。
4Kの解像度は欲しいわけです。

で、ここで使われているコンテンツですが、現在、静止画と動画がミックスですが、どちらかというと静止画が多いですね。
デジタルサイネージは、駅、通路がメインですからね、動画で30秒とか立ち止まられると困るわけです。

多くの場合、静止画をスライドショーにします。
スライドショーにするには、少しでも動きをいれ、目立たせるためです。

 
実はライトルの解像度は、4Kです。
しかも、動きを伴う空間表現を、数秒で行うので目立ちます。
とは言うモノの、動きを伴う時は、2K対応となります。

しかし、カメラがあれば撮せるので、非常にトライしやすい。
元データーは4Kなので、プログラムによっては、4K動画再生もありそうです。
新しい表現として、定着する可能性は十分あると言えます。

 
■ニュース&スナップには最適
空間を切り取る感覚のライトロが、ベストなのはニュースと日常でしょうね。
リアリティが違いますし、スナップはその情景が瞬時に思い出されることになると思います。

 
また、医療などもライトロは有用です。
今後の医療は遠距離診断を入れざるを得ません。
要するに画像診断です。

これも、立体表現ができる、後でもピントが合わせられるのは、俄然有利です。

 
昔、カシオがデジカメを開発している時の1つの壁は、「テレビでは動画しか見ない」とユーザーに言われたことでした。
ご存じのように、デジカメがここまで来たのは、PCであり、スマホがあったからです。
決してテレビではありません。

私は、ライトロは、デジタルサイネージを経て、PC、スマホに行き着く可能性は十分あると感じています。

気づいた時、ライトロが世界標準になっているかも知れません。

 
商品のより詳しい情報は、ライトロのホームページにてご確認ください。
https://www.lytro.jp/
 
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2015年6月14日

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