AQUA、咆哮!『家電』から『価電』へ(追加版)
「男子、三日合わざれば刮目して見るべし」と言います。
企業も「法人」と呼ばれる「人」ですから、この言葉が当てはまるかも知れません。
記者会見で見せた、旧三洋の技術者を中心としたハイアールアジア有する「AQUA(アクア)」の意気込みをレポートします。
■AQUAとは
「AQUA」は、中国系グローバル企業ハイアールが、旧三洋の技術者を大量雇用し、日本技術の洗濯機、冷蔵庫を世に出す時に作ったブランドです。
日本では、一度レッテルが貼られると、そのレッテルを剥がし、貼り替えることが中々できない市場です。
この傾向は世界中ではないかと言われるとそうですが、日本では特にその傾向が強いです。
私のこのレポートにしてもそうですね、「旧三洋」というレッテルを貼っていますから。
AQUAは、2012年からのブランドです。
その間、発表された洗濯機、冷蔵庫などは、独自技術に溢れた製品が数多くあります。
例えば、ドラム式洗濯乾燥機:AQW-DJ7000。
『エアウォッシュ機能』が付いています。
活性力の強いオゾンを使って、汚れを分解したり、消臭したりする機能ですが、パナマ帽なども洗うことができます。開発者としては、クリーニングも難しい「和服」対応として考案したのですが、そうそう和服は着ませんからね。帽子でもイイわけです。
しかし、新ブランドの目新しさは、ずっと続くモノではありませんから、あるタイミングでブランドは自分で自分の宣言をします。
私は、こんな商品を作って行きますと言うわけです。
しかしこれを声に出して行うメーカーは、そうそうありません。
最近はやや多くなったと思いますが、まだまだ少数派です。
そんな中、2015年に入り、AQUAは変わり始めました。
1月の発表会では、まだ荒削りで、見えにくかったメッセージが、半年経ちより鮮明になったのです。
■オレは「新参者」
ステージに上がったのは自ら「新参者」の名乗りを上げる伊藤社長。
昔のカブキモノは、カブいた服装で、名乗りを上げ闊歩したそうですが、伊藤社長は、そんな雰囲気がある人です。
形で言えば有言実行。
伊藤社長の話は、すごく面白かったです。
彼が社長になり1年なのですが、彼がこの1年手がけたのは「企業文化を作ること」だったと言います。
イイ商品は、イイ文化を持った人から生まれますからね。
でもこれが分かっていない経営者も多いのですよ。
例えば盛んにリストラをかける企業があります。
リストラの仕方にもよるのですが、多くの場合「Yesマン」が残ります。
その場合、まず新しい視点のモノは出てきません。
つまり、面白くない商品ばっかり世に出回るわけです。
モノが売れないと嘆いているメーカーは多くありますが、そりゃ、きちんとモノを見分ける日本の消費者相手に、こんなモノレベルだと売れません。
これは、社長さん、貴方が悪いのです!
ま、それはさておき、社長業は人を活かすのが重要です。
文化はその生業からでてきます。
その彼から出た言葉、「企業文化を作ること」は面白さに富んだ言葉です。
また、伊藤社長は、どちらかというと即決型ですね。
即断か、どうかは、分かりませんが。
ラオスとの国対企業の契約なんかは、あっと言う間でしたから。
社内の方法は知りませんが、伊藤社長が短気に、前例がないことを成し遂げたことは事実です。
■黒字と赤字の差
さて、今回、AQUAは15年ぶりに黒字になったそうです。
これは旧三洋時代から数えてですから、よく頑張られたと思います。
会社がバラバラに分解したわけですし、一度日本メーカーに引き取られて、更に会社を変わってですから、三洋からいた人は感無量でしょうね。
伊藤社長は続けます。
「今、家電が売れません。
赤字メーカーが一杯。何故?!」
その彼が言い放ったのは、今、家電が売れない理由は、
■延長線上に解答はない!
伊藤社長は続けます。
「昭和30年代、家電創世記。
家電はライフスタイルを変える、価値観を変えることができた。
例えば、洗濯機。
女性を洗濯という重労働から解放。余剰時間を作った。
例えば、テレビ。
遠くのモノが家の中でも見られるという、娯楽を作った。
しかし、それ自体の役割は終わった!」
私もそう思いますね。
特に顕著なのがテレビ。
テレビは、過去何度か爆発的に売れた時がありました。
1950年代のテレビが出た時、1960年代のカラー化された時、1990年代の大画面化された時。
いずれも、本質である「娯楽性」を追求したテレビが売れました。
2011年もデーター的には記録的な売りなのですが、こちらはアナログ放送から、デジタル放送への切替ですから、テレビの魅力ではなく、否応なしに買わされたわけです。
この時にハイビジョン化され、その高画質化の恩恵は日本国民は全員受けています。
しかし、そのインパクトは、1990年代前半の皆が16〜18インチのテレビを、29〜32インチのテレビに買い直した時程ではありません。
今、よく言われている4K、8Kの高解像度は、この延長線上ですからね。
誰が何を言おうとも、そこに解があるとは思えません。
しかし、私が知っている限り、ここまでそれを明言した社長はいません。
■家電から価電へ
で、伊藤社長は革命宣言をします。 そして次の発言が面白かったです。
「私は『家電』という言葉は嫌いです。
どうもイメージがよくない。
『家電』を『価電』にしたい!」
これは上手い言葉です。
家電は「家庭用の電化製品」の意ですから、製品の所属を示しているだけです。
しかし価電は違います。
「価値ある電化製品」ですから、企業の想いが込められているわけです。
そして全ての人の気持ちを! 「日本覚醒」は言いたい人が一杯いたと思います。
私は、この言葉を見た時、明治の岡倉天心の「茶の本」を思い出しました。
アジアは心情的には一つなのです。
さて、この後、伊藤社長、肝入りの製品、プロトタイプが続々発表されるのですが、余りにも数が多いので、明日以降、何度かに分けてレポートします。
人によりいろいろな視点がありますが、必ず興味引かれる商品がありますので、お楽しみに!
2015年6月3日