ヨーロッパの照明文化を日本に!
ジェイク ダイソン ライトの設計思想
「日本人は、蛍光灯が好きなんだなぁ。」と海外から戻る度に、認識を新たにします。
逆に、ヨーロッパに行くと「ヨーロッパ人は電球が好きなんだなぁ。」と思います。
今回は、イギリス人、ジェイク・ダイソンが作ったライト(照明)のお話です。
■驚愕の大きさのLEDチップ
まず写真を見てください。
5月29日に発表されたジェイク ダイソン ライトから発表された「アリエル」のLEDと特殊レンズです。
黄色の部分がLED、透明部分が特殊レンズなのですが、正直、見た瞬間にのけ反る位ビックリしました。
今まで目にしたことのない大きさです。
聞いてみると、径は25mm。
通常のLEDは、多くの場合、数mm。
それを複数(数十〜数百)使って、1つの電球、蛍光灯を作り上げます。
LEDは高額な半導体ですが、生産時に出来のイイモノと悪いモノがあります。
小型で複数使用すると、中に2〜3個出来の悪いモノが混じっていたとしても、問題ありません。
全体で対応するわけですからね。
そうして、LED照明はある程度の価格で世の中に出回っています。
しかし、大きなチップだとそうは行きません。
品質が悪いと即使えません。
その分、コスト高になります。
またチップを大きくすると放熱しにくくなります。
ダイソンによると普通のLEDが120〜140℃の発熱をするそうですから、熱が逃げにくい大型LEDはもっと温度が上がりそうです。
LEDの性能は熱により劣化しますが、大きなチップはより劣化し易いわけです。
しかし、それでも大きなLEDを使うのはどうしででしょうか?
ジェイク ダイソンの解答は、「影が1つしかできなからね。」
でした。
■影1つにこだわる理由
谷崎潤一郎がしたためた「陰翳礼賛」という本があります。
谷崎のというより、日本の昔の美意識が出ており面白い本です。
昔の日本人は、「闇」の怖さと共に、「影」の面白さを知っていたのですね。
が、今の日本人は部屋の隅々まで明るくするのが当たり前になっています。
これは戦時中の「灯火管制」の反動だと言った人がいましたが、定かではありません。
しかし、今の日本人が部屋の中が光に満ち、影を気にしないのは事実です。
ヨーロッパはこうではありませんね。
差し障らない限り、電球を使います。
日本から行くと実に暗い。
電球は点光源ですから、影は1つです。
そうイギリス人、ジェイク・ダイソンが、作りたかったのは、今まで慣れ親しんできた空間なのです。
そのための巨大な、1チップ構成のLEDライトなのです。
■LEDを守るヒートパイプテクノロジー
1チップですから、このLEDは虎の子といえます。
熱の劣化から護る必要があります。
ジェイク ダイソンが採用したのは、ヒートパイプテクノロジー。
人工衛星にも使われている技術ですね。
熱伝導の良い両閉じの銅管パイプ。
中は真空、そして水が一滴入れてあるそうです。
私も持って先を湯に浸けましたが、2秒でカッと熱くなります。
冷えるのも速く、こちらも2〜3秒です。
LEDの熱をこのパイプが持って行きます。
このパイプの熱はアルミ性の筐体に熱を伝え、そこから空気中に熱を放出します。
これで37年は大丈夫ということでした。
■37年持つ筐体
電球、蛍光灯は、灯り自体に寿命があります。
数年ですね。
古い器具だと外すと樹脂が焼けた状態が見えたりして、「まぁ取り替えようか」となり、10〜20年位で取り替えたりします。
ダイソンは、このライト37年以上持つとしています。
つまり筐体は37年以上持たなければならないわけです。
何でもないようですが、赤ちゃんが成人どころか中年になるまで、壊れずに使われることですから、これはかなり頑丈に作る必要があります。
今回発表されたアリエルはペンダント型ですので、可動部はありませんが、前回発表されたシーシス(CYCS)タスクライトは可動部を持ちます。
前回見た時、科学器具と同じ仕組み。
何故、この方法を採用したんだろうか?と思いましたが、理由は、37年間使っても機能が劣化しないためでした。
ライトの位置の変更、固定を摩擦や、素材特性に大きく依存させますと、劣化で使い物にならなくなることがよくあります。
これを嫌ったわけです。
ジェイク ダイソンは将来の展望の1つに、LEDの生産ラインを所有することがあります。
現在のLEDは米クリー社からの供給ですが、自社で作れるようになりますと、コストダウンも可能になりますからね。
ちなみにアリエルには、アップライトとダウンライトがあります。
ダウンライトは、照明範囲が四角という特徴があり、アップライトは天井を照らし間接照明として使えます。
価格、販売日など未定ですが、ヨーロッパらしい照明だと思います。
手頃な価格で発売されたら、1台書斎に欲しいと思っています。
商品のより詳しい情報は、ダイソンのホームページにてご確認ください。
http://www.dyson.co.jp/
2015年5月30日