現在、換気と空調家電はほとんど同調されていません。
換気は外の空気との入れ換えですが、空調は密閉空間内での空気が対象になるからです。
双方とも、重要なんですがねぇ。
■理想の換気
換気は必要です。
そうでないと酸素がなくなってしまいますので。
では、どんな換気が理想的なのでしょうか?
部屋の中の空気は、
「酸素濃度」「有害ガス」「温度」「湿度」「浮遊物」の5つで決まります。
条件を羅列すると、下表のようになります。
酸素濃度 | 18%以上 |
有毒ガス (一酸化炭素など) |
ないこと |
温度 | 23~28℃ |
湿度 | 50%前後 |
微細浮遊物 | アレルゲン、及び鼻毛、粘膜で処理できない 大きさのモノがないこと |
■換気のポイント
ポイントは3つあると思います。
1つめは、換気自体は非常にスローペースだということです。
建築法で定められているのは、一部屋分の空気を30分で1回換気できる能力を持つ換気扇を設置することです。
空気清浄機で早いモノは、12分位です。
このレベルになると、機器の周辺で風を感じます。
エアコンは、はっきりと風を感じるわけですので、それ以上のパワーだということです。
逆な言い方をすると、エアコン側みると、通常の換気は無視できるレベルともいえます。
2つめは、換気は、汚れた外の大気をそのまま入る可能性があるということです。
いつもいつも汚れているわけではないのですが、外の空気は「汚い時がある」ということです。
3つめは、湿度です。
冬場、湿度が低く加湿が必要なことがありますが、結露の問題がありますので、基本は除湿です。
実は梅雨時、もしくは雨天以外、日本は外の方が湿気が低いことが多いです。
理由は、人の呼気には水蒸気が含まれているからです。
完全密閉空間に、人を入れておくと、湿度は飽和するまで上がって行きます。
このため和室は、モノを置かない、全面開閉できる扉で、湿度を残さないようにしています。
しかも壁、木材、紙を多用していますので、多少の湿度なら吸ってくれますからね。
日本家屋は、日本の気候に合わせ作られているわけです。
■解決策
1つめ、2つめの対応は換気扇を使った強制換気が解決します。
まず、換気量の正確な管理ができます。
そして換気扇に、専用フィルターを入れるわけです。
浮遊物を最小限に抑えられますし、強制的に室内に外気を取り込むので、部屋内圧が少し上がります。
つまりドアを開けると、外に空気が流れるわけですから、浮遊物が中に入りにくくなります。
「黴菌」「ウィルス」に絞るなら、空気溜まりを作り、部屋に入れる前に活性酸素、場合によってはオゾンなどでやっつけるのもありでしょう。
尚、換気用の空気の質を整えるのは、割と有望な方法だと思います。
必ずダクトを通すわけですから、その間に、「温度」「湿度」「浮遊物」を調整することが可能です。
床下のように、「温度」「湿度」が外より変化が少ないことを利用すると、より効果的な上、省エネにもなります。
問題は3つめです。
家具が多い現在の部屋では、湿度は溜まりやすいです。
これは風が通りにくいからですね。
しかも、洗濯物の部屋干しを推奨する人もいますからね。
これを手っ取り早く除湿するなら、外気を入れるのが最も早い手です。
「換気」が、除湿に効きます。
ちなみに、梅雨時に部屋から湿気を取るには、ストーブ、火鉢などで暖めてやるのです。
つまり部屋の温度を上げて、湿度を外に出すわけです。
今なら除湿器ですね。
除湿器は、エアコンと同じ原理のコンプレッサー方式と、乾燥剤を使うデシカント方式があります。
エアコンの除湿機能が使える夏の間は、「エアコン」を使うことをお勧めします。
冬は、除湿が上手く行かないエアコンもあります。
こんな時は、デシカント方式、もしくはコンプレッサーとデシカントのハイブリット方式の除湿器をお勧めします。
■部屋の空気を均一に
と書きましたが、上に書いたことを上手く進めるためには、次の空調家電のバランスが必要です。
「換気扇」「エアコン」「空気清浄機」「除湿器」「加湿器」そして場合によっては「扇風機」「掃除機」です。
バラバラに使ってもダメですね。
野球のWプレイと同じ、タイミングよい連携プレイが求められます。
制御は「HEMS」で行うのでしょうね。
外気温データーも合わせ、制御するわけです。
コントロールプログラムを更新することができますので、HEMSでのコントロールが一番です。
このときの大きな問題は、空気の均一化です。
家具などを見直して、風通しをよくするのが、条件になります。
そして緩やかな空気の循環を起こしてやることが条件となります。
■気流を制する
今エアコンは、「気流」があるのが当たり前です。
ただエアコンは、壁に固定ですので、空気の撹拌が足らない可能性があります。
このため空気清浄機をエアコンと逆に配置するのが基本です。
「部屋中央に置いて」というメーカーもありますが、そんなことをすると、部屋の使い勝手がすごく落ちます。壁際に寄せて使うことを前提とした空気清浄機を使いましょう。
更にいうと、空気清浄機、加湿器、除湿器は移動し易いことを条件に入れてもイイと思います。
ある程度場所は決めても、臨機応変、いろいろなところで使える方がベターです。
■結露させない方法
日本は高温多湿。
有害無害を問わず、カビが多い。
溜まった水があると、室内外、夏冬を問わず生えますからね。
今、結露で怖いのは、壁の中での結露です。
断熱材がきちんとはめ込まれていると、そんな所で結露はしないのですが、断熱材の厚みが不十分で、冷たい部部があるとそこで結露する可能性があります。
壁の中でカビが生えると大変ですね。
部屋にカビの胞子を供給し続けることになります。
とにかく、結露させないように湿度コントロールすることが重要です。
ところが、これが難しい。
加湿して温度を下げると、当たり前ですがたちまち結露します。
しかし、これって冬場よく見られる光景ですよね。
肌がちょっと乾く、喉が渇く、で加湿器全開。
そしてエアコンを切って寝ると、あっという間に、窓ガラスが結露します。
この状況を否定しているわけではありません。
分かって欲しいのは、温度、湿度、そして部屋は密接な関係にあることです。
そして湿度は、適切に保つのが非常に難しい。
HEMSで制御しても、制御しきることは難しいでしょうね。
しかも、そこまで進んでいないのが現状です。
■何故こんなことになったのか?
高いお金を出して家を建てて、しかも21世紀になって、何故こんなことに悩まなければならないのでしょうか?
それは目指していること(コンセプト)が違うからです。
人は「快適に生きる」家(以下 健康ハウス)を求めています。
ところが、作られる家は、エアコンなど大量に電力を消費する家電のための「省エネ」ハウスなのです。
省エネハウスと、健康ハウスは違います。
省エネハウスは、断熱材で囲まれた密閉空間が連なった家です。
極端なことをいうと、「気温」の制御以外考えていません。
ただ盛夏では、冷房と除湿は非常に快適です。
このため勘違いしますが、今の家は「省エネハウス」なのです。
じつは健康ハウスに求められるのは「湿度」制御がメインなのです。
日本は高温多湿。
このため微生物が大量にいるわけです。
それから身を守るのが「湿度制御」なわけです。
省エネハウスでも、「ダニ」も居れば、「カビ」も生えるわけです。
■システムとして考えるべき
これに対抗するのは、やはり連携プレイです。
「換気扇(換気)」「エアコン(温度、除湿)」「空気清浄機(浮遊物)」が基本です。
これに「家の素材」が、四天王でしょう。
重要なことは、「均一性」です。
システム実験は多くの場合、家具のない部屋に測定器を持ち込んで行われます。
実験ですからね。
実験と実際は合わないことが多いです。
が、技術が発達するとある程度対応できるのも事実です。
例えば「音」。
リビングで使うことを前提としたAVアンプの多くは、通常の視聴位置でベストな音体験ができるように、自動調整システムが付いています。
リビングの状況は、家によりかなり異なるので、取られた措置というわけです。
部屋ごとに最適設計できれば、かなりイイ。
管理方法として有望な「HEMS」は、昨年まで、対応品目として「エアコン」を入れてきましたが、今年は言い方が「空調」に変わってきています。
またプログラムを組むのもかなり作るのが楽になっています。
ほとんどプログラミングの知識がない人でも組めます。
完全連携だと、同じメーカーで、この3種を揃えてもイイ。
競争原理からいうと、どんなメーカーでもというのが基本ですが、健康というのは重要ですから・・・。
売り方としては、エアコンではなく「空調システム」です。
今後注目したいです。
■昔は局所暖房、今は・・・
風通しのイイ、日本建築の最大の弱点は、暖房です。
日本人は、「局所」暖房で対応してきました。
間仕切りして、火鉢、コタツですね。
この考え方は活かせないでしょうか?
私は湿度管理に活かせるのではと考えています。
例えば、冬にベット周り、蚊帳を吊るのです。
空気の流れをわざと遮断するわけです。
「湿度」と「温度」共に停滞します。
当然、喉も皮膚も楽になります。
要するに、過剰加湿を防ぐわけです。
■メーカーは、スローペースで対応中
各メーカーは、このことに気付いています。
東芝が、連携ができる空調を出し始めましたし、三菱からは顔周りだけ加湿できる加湿器を出しています。
パナソニックは、パナホームも持っているので、システム的には絶好のポジションですし、ダイキンなどの専用メーカーもシステム参加できる機能を付けています。
まだトータルでの提案商品が一件もないわけですので、全体的な流れは見えていないと思います。
が、今後、堰を切ったように、こんな話がされると考えています。
今後、空調を揃える場合は、自分のいるエリア、自分の家の特徴、自分の生活スタイルという視点が必要になると思います。
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思うこと「“HEMS” ビジネスは、誰が主役なのか? ENEX / SEJ / 新電力EXPO展示会から」