速報として、ダイソン Pure Coolを「ニュース」で報じましたが、かなり舌足らずでした。
どこがスゴいのかを、もっと突っ込んだ形でレポートします。
■ダイソンの扇風機の特徴をお復習い(おさらい)
ダイソン製品の共通した特徴は、強力な小型モーターと気流を自在に操る技術、そして独自性ですね。
扇風機の独自性は、何と言っても羽根がないことなのですが、これは扇風機の弱点をかなり払拭しています。
扇風機は夏の必需品のように言われていますが、今の世、夏の必需品はエアコンです。
これは夏の温度が非常に上がっていることと、都市部を中心に外気が汚れているためです。
人間は、体温に近い温度だと体の維持することができません。
そとに熱を逃がしてやるのが追いつかないのです。
で、体に熱が籠もってしまい、熱中症になります。
開けて、扇風機でしのぐという手段もありますが、場合によっては光化学スモッグなどの問題で強制的に閉めなければならないことだってあります。
日本の現代住宅は、基本、省エネ住宅で、断熱材をタップリ使っています。
エアコンを使用することが前提になっているためです。
ところがサブで使う家電としては、扇風機は非常に大きいのです。
これは、風量を稼ぐために、大きな羽根を使用しているためなのですが、設計が変わらないためでもあります。
それは、羽根を動かすモーターが、羽根の後ろに付いているということです。
これが意味することは、モーターという重いモノを高く掲げて動作させているということです。
重心が高い。
ひっくり返るのを防止するために、大きな土台がいるわけです。
DCモーター採用の省エネ型でも、ここは変わっていません。
このため、扇風機は基本、季節家電なのですが、押し入れに放り込むには一寸大きな家電なのです。
ダイソンの羽根を持っていません。
強力な空気の流れを作り出し、それを外に風として出すという方式を取っています。
モーターは一番面積が少ない縦置き。
しかも、床すれすれなので倒れない。
そうダイソンの扇風機は非常に合理的なのです。
まだ工夫の余地があるとは言え、斬新で、完成度の高い製品です。
■扇風機と空気清浄機を合体
ちょっと長めの前置きをしたのは、理由があります。
というのは、今のリビングには空調家電が溢れているからです。
メーカーの人で、こんな風に言う人がいました。
エアコンは、ほぼ通年使います。
空気清浄機は、春の花粉症から始まって、梅雨のカビ、夏のダニ、秋はまた花粉、冬のウイルスと通年ですね。
エアコンを上手く使うためには、扇風機はサーキュレーターとしても使って通年。
冬は乾くので加湿機、梅雨はエアコンの除湿だと寒いので除湿器・・・。
私も言います。
「人のいる場所はどこですか?
それにコンセントの数も足らないじゃないのですか?」
メーカーの人の言わんとすることもわからないではないですが、やはり割り切れません。
ダイソンは解答の1つとして、扇風機と空気清浄機を組み合わせたわけです。
最近の空気清浄機は、タワー型も多いですからね。
そうなると、扇風機が付いている分だけお得という言い方もできます。
■PM0.1、99.95%除去の意味
PM2.5は、大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径が概ね2.5μm以下のものを意味します。
アメリカで1997年に初めて環境基準が設定されて以降、世界の多くの地域でPM10とともに大気汚染の指標とされています。
そのサイズであれば、PM2.5と呼ばれるので、具体的に、れの物質と決まっているわけではありません。
固体もあれば、液体もあります。
何故、PM2.5が問題になるのかというと、そのサイズです。
直径:2.5μm。
サイズが大きい場合、鼻毛などが塵埃を絡め取ります。
そう、体内に入る前にトラップが可能なわけです。
ところが、PM2.5のサイズになると、鼻毛などではトラップできません。
むしろ、肺胞まで入り、その組織を傷つけてしまう可能性があります。
そして、PM0.1のサイズになると、そのまま血液に入る可能性があるらしいのです。
肺胞の先は毛細血管ですからね。
小さいと可能性はあるわけです。
空気清浄は大きく分けて、2つの方法があります。
浮遊物をフィルターで濾過する方式と、OHラジカルなどでやっつけてしまう方式です。
このうち、OHラジカルは、相手がウイルス、カビ、菌などの有機物には、効果があるのですが、硬い殻に包まれた花粉などには効果がありません。
中まで入り込むことができないからです。
このため、全てに効くのはフィルター方式と言えます。
が、これは濾過したモノの、カビなどはそこで死ぬわけではありません。
水などがあれば、フィルターでもカビます。
まったく、空気清浄というのはやっかいです。
このフィルターで有名なのが、「HEPA(ヘパ)フィルター」。
JIS Z 8122 によって、「定格風量で粒径が0.3µmの粒子(PM0.3)に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ」とされます。
つまり、HEPAフィルターだと、PM0.1は、ある程度の量通過してしまう可能性があるわけです。
これ以降は、データーが提示されていませんでしたので、たらればの話となりますが、世の中全体の動きは、少なくとも部屋の中の空気は徹底的にきれいにするという流れになっているのは事実です。
ダイソンが、PM0.1を99.95%除去できるというのは、彼らがHEPAフィルターを超えるフィルターを作ったからです。
これはスゴいことです。
■360°グラスHEPAフィルター
ダイソンは、このフィルターの開発のため、2年の歳月と450回の試作品を作ったそうです。
360°グラスHEPAフィルターは、1.1㎡のマイクログラスファイバーをプリーツ状に254回折って作られるそうです。
円形のフィルターは、折り込み折り込みされたマイクログラスファイバーで出来ているわけです。
1枚だと、PM0.1は防げないのですが、積層することによりPM0.1をトラップしてしまうわけです。
トイレットペーパーをイメージしてもらうと分かりやすいと思います。
フィルター(1枚)を触ったところ、厚手のポッテりした和紙の様です。
実際、会場でフィルターをバラしてみたところをムービーに撮りました。
大変申し訳ないのですが、カメラを縦に構え録画してしまったので、90°ずれてしまいました。
が、それでも長さのイメージが掴めると思いますので、ここに載せておきます。
後、濾過の場合、フィルターの前後で、圧力差は少ない方がいいです。
圧力差があると、フィルターは目より大きいモノでも通過させる場合がありますから。
空気清浄の実演を見てください。
風車は、かなりゆっくり回っているのですが、速やかに空気はきれいなります。
Pure Cool、よくできています。
■フィルターはワンタッチで交換
この360°グラスHEPAフィルターですが、交換は4,382時間(Pure Coolのマニュアルより)だそうです。
12時間/日使ったとして、365日。ちょうど1年です。
交換は、30秒位。
費用は、6,480円です。
■稼働音
Pure Coolを使う時に、一番気になるのは、風と音の関係でしょう。
10段階で風の力を制御できるのですが、次のように分けられます。
1-3段階 | 風も、音も余り感じられない。 |
4-6段階 | そよ風、音がし始める。 |
7-10段階 | 風も強いが、音もする。 |
それ以上だと、静かな会話、知的活動には向かない様に思います。
■第一印象:使い方はユーザー次第
なかなか良く出来た商品ですが、やはり扇風機が基本なんだなと思ったことがあります。
それは、空気清浄機としての自動運転機能がないことです。
空気清浄機は、浮遊物をセンサーで察知して、空気をきれいにして行きます。
それは稼働音を小さく、無駄な電気代を使わないためでもあります。
しかし、Pure Coolの場合、ユーザーは自分で使い方を決めなければなりません。
多くの場合、次のような使い方になるように思います。
扇風機として使う時は、必要な風量優先ですね。
そうでないと扇風機として、役立たずですからね。
大風量で使うのは夏。
エアコンの風で、天井に添わせ気流を起こし、下に落ちてきた所を、このPure Coolで受ける形がイイと思います。
逆に冬は、エアコンは風を足下に落としますから、エアコン側に設置し、1-3の極めてゆるやかな風で、ちょっと後押しする感じだと思います。
私は、暖房はオイルヒーターが好きなのですが、Pure Coolの1-3の極めてゆるやかな風は、緩やかな暖かさの横方向のサーキュレーションはいいのではと思います。
自動運転機能はないのですが、タイマーはあります。
これを上手に、取り込むことがポイントのように感じます。
今後、この様な、複合空調家電は増えて行くと思います。
特異な形の扇風機で、評判を取ったダイソンですが、今回、PM0.1の宣言と共に、「ダイソンは新しいトレンドを持ってきた」と評してもいいかと思います。
商品のより詳しい情報は、ダイソンのホームページにてご確認ください。
http://www.dyson.co.jp
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